第二話
終わりの認知
「結局、あのあと何もせずに1日が過ぎてしまった・・・」
「24時間って以外と短いのな」
人がいなくなって初めての夜。結果は睡眠時間0分。
理由としては
「せめて誰か生きてる人に会えればなぁ」
再びあんな夢を見るのが恐ろしい。家族と会えるなら何でもいいというわけではないのだ。
「今日は散策でもしてみようか。新しい街に着いたら散策するってのがRPGではお決まりだしね」
足の向くまま、というより気の向くまま歩いてみた。
「学校、っても数年前までいた高校だし特別でもないな」
「ここには人影はないんだな・・・いや実際原爆が落ちたわけじゃないんだろうけどね」
イツキ自身は中学から仲のいい人友達が多くおり、いじめもなく平和で楽しい学生生活だったと思っている。今でも。
「んん?体育祭?明後日か。アオハルしてんなぁ高校生!」
「いやいやしゃんとしろ20代!お前もさほど変わらんだろうが」
「ってことは明日が文化祭ってことだな」
・・・・・・
「今週末だっけ、うちの学校」
「さよならネガティブ!次のとこに行こっと」
今度は昨日通った商店街
「ふm・・・静かな商店街ってのもなかなか乙なものですなぁ兄弟!」
空虚な商店街に響く自分の声。
自分の行いを省みるには十分で
「こんなこと言ってはっずかし・・・バカみたい」
「戻ってきたら、ちゃんとお代払わないと」
コンビニからかっさらってきたポテトチップスをバリバリと食べながらではあるが、罪悪感だけは拭えないでいた。ついでに腐りかけの肉まんをレジに置いておいたのも原因ではあるだろうが。
「ま、異世界物じゃなくてこういう状況だし、コミュ障には助かってるんだけどね」
2年半引きこもっていたせいで、積極的に話しかけることが苦手になっていた。
「満足した。次はどうしようか」
服をいただいて、冷たい温泉に入り、お菓子を食べた。
無銭のくせに贅沢の限り尽くした。罪悪感を代償に満足感を得て、次の目的地に向かう。
「やっぱこういう時はここだよね」
知識の倉庫。人もいなければ、人影もない。
「図書館って人がいないとまた怖いもんだわ」
静かではあっても人がいて、互いのことを考えている、日本人の規範のようなこの場所。
よくお世話になっている。
「・・・肉が。図書館って飲食禁止なんだけどなぁ」
生々しい肉が絵本の棚の前に転がっていた。
「こういう状況って、やっぱ宗教史とか神話だよね。わかる人いないかな?」
「さすがに読みすぎかな。速読は健在ってことで」
中学生の頃、夏休みを使って何冊読めるかという自由研究をした際に会得した。
結果は「嘘つくのはやめなさい」と一蹴されて終わってしまったが。
「どんな物語にも、The世界の危機みたいな場面は存在するんだってことしかわからなかったかな」
「現実的なのは宗教史で、神話とかは超常的すぎるかな」
「いや十分超常的なんだけども!」
結局のところは・・・
「得物はゼロか!」
「こういうの調べるんだったらもっと大きな図書館だったよね、絶対」
「ん・・・帰るかなぁ」
「はー・・・ちょっと冷えるなぁ」
食物月の夜だ。羽織もの1枚では心もとない。
もう少し厚着すべきだった。
「それにしても誰にも会えないとは思えなんだ」
「人がいるところなら電気がついてたりしてな」
ー。
「ってもうそれは確認済みだっけ」
「振り返れば誰かいたりしてっ」
ー。
「なわけないか!」
ー。
ーそこにいたのは
「う、うぁ、え?」
「人?」
に思えたのは「それ」のシルエットが人に似ていたからか。
・・・ところでニンゲンというものはこんなにも多くの口という器官を持っていただろうか。
知っている限り目と耳は二つあったけど
「ーーーーーー!」
逃げる思考はあっても身体が動かない。
このままじゃ殺される何で何でヤバイヤバイ何でヤバイー
奴は何かを一心不乱に食べながら、それでも一切目を離さずにこちらを見ていた。
「敵意はないの?」
ひとまず襲ってくる様子はない。
ただそれは今だけで、気が変われば生きて帰れる保証はゼロ。
「あいつ何食べてんだろ。もしかして・・・人の腕?」
「今日買った服と一緒・・・腕時計も」
「だれか、まだこの街にいたんだ。会いたかったな」
「近づいてきた、今度は足か。持ち歩いてんのかよ」
「うごけないのに体がかるい。そろそろうけないかな。ぷかーって」
ー。
「朝・・・?朝じゃん!めっちゃ朝!」
「寒っ!晩秋に路上で野宿とか死ぬ気満々かよ」
「よっこいせっと、あれ起き上がれない」
「もう一回、よっ、と。んー?」
ー
「足と手は・・・?」
達磨。
「あ、あぁ、ああああああああああああああああああああああああああ」
気づいてしまった。
その瞬間、繋がれた意識が赤く染まってー
「うあぁぁぁ!」
「ハァ・・・ハァ・・・」
「うぶっ、おぇぇ・・・けほっげほっ」
「ここ、自分の部屋か。」
「なんで・・・なんで生きてるの」
「・・・腕時計!あった。よかった」
「食べられたっていう認識であってるんだよね。手と、足だけ?」
「痛っ!頭がガンガンする。なにがなんだか」
「・・・・・・もういやぁ」