第四話
「はぁ?喰われた?」
「そう。で生き返った。生き返ったのかどうかは表現がよく分からないけど、とにかくなかったことになった」
「気づいたらイツキさんと同じように自宅に戻っていた。時間は…恐らくは朝だったと思う」
「ちなみに場所を教えていたのが幸いして、姉さんたちは家の前にいたよ」
ーで
「ここからがあのバケモノについての雀の涙だが貴重な情報」
「俺が喰われたところを目撃した仲間が言っていた」
『1.ヒトの手足のみを食べる』
「家に着いた後は変に冷静でさ、色々考えてたんだ。」
「俺が喰われたとき、一瞬で死ねなかったってのが気にかかって仲間に聞いたんだよ、なんで即死できなかったのか」
「そしたら、胴部分は無傷だったって言ってた。イツキさんはどうだった?」
「…答えたくないかな」
「あんたねぇ、こっちだって教えてやってんだから少しくらい…!」
「はいはい次いくよ」
『2.逃げれば追われない』
「俺以外が襲われなかったってことだ、あいつは燃費がいいんだろうな」
ー関係あるのだろうか
「それか、俺しか食べない理由があるのか、俺以外は食べれない理由があるのか」
『3.見えない何かに攻撃されていた』
「これなんだけどね…」
「見えない何か?」
「あぁ、奴が俺に接触した雰囲気は無かったようでさ。透明なナニかがいるのか、一瞬の攻撃だったんだか」
対策のしようがないではない。
だってどんな物語でも敵には弱点がある。
でも、現実で不可視の攻撃だなんて遭遇したら負け。BAD ENDルート一本しかない強制イベントとか無理ゲーでしょ。でも…
「そうなんだ、無理ゲー。でもね、わかる?夜にしか現れないかもしれないってこと」
「それはなんとなく、昼間には遭遇しなかったし」
「でもそんなこと、証拠なんて…目?」
「やっぱりイツキさんは聡明だ。なにも教えてないのに…噂だけのことはある」
「あいつは目がなかった。私の同級生の医者もどきが言ってたんだよ」
「で、色々話し合って考えてみたの」
「目の代わりに、全身に口があるもんだから2つまで案が絞れた」
「さてじゃあここまで、どうかな、一緒に来てくれる気にはなったかな?」
「…消化器が全身を巡っている。あるいは口のほとんどは威嚇用で、筋肉だか中脳が非常識なまでに発達している。」
「んで、個人的な見立てでは後者かな。思い出すのもぞっとするんだけど、あいつ、一つの口で、四本を全部食べてたし。」
「それが正解だったら逃げるのは無理、シンプルな運動能力なら絶対」
「ならあのバケモノはどこから情報を得ているか、そりゃあもちろんあれだけデカい口」
「嗅覚、味覚…風の流れか」
ー・・・
「あ、」
ーしまった。
「調子に乗らないで、ここまでだって言ったの」
ー冷たい
「聞いてた以上の人で驚いているだけだよ、気にしないで」
「ここまでの話を聞いてどう?ついてきてくれるかな?」
「なんのメリットがあるの?あと目的、それを教えてくれたら…従うよ、どうにでもして」
「メリットと目的?そんなの決まってるじゃない、安全よ。あなたのことは私と私たちが守る」
「いいよ、じゃあついていく」
守る…
どこまで信じていいんだか
体よく利用されて、逃げるための捨て駒にされたらたまらないよなぁ
「ここ、ここが俺の家。どう?家の広さはまあまあ自慢なんだ!」
「親父の威光を見せびらかすな、みっともない」
「姉さん辛辣~」
「仲がいいことで…」
「機嫌悪いんですか?荷物、なら仲間に運ぶように言っておきましたよ」
本来なら気が利く少年であると評価されるんだろうけど…違和感がある
どうせ見限ることだしそんなことはいい
「それより約束、ちゃんと守ってくれるんだよね」
「はい、もちろん。まずは個室の用意、してありますよ」
「これから何かするつもり?」
「当面は手分けして安全の確保と生存者の保護をしていこうかと」
「聖人だね、とうてい真似できないな。独りで支えきれなくなったらどうする気なの」
「随分と俺の腹を探ってきますね、信用なりませんか。それも仕方ありませんけど。そうですね、イツキさんの手を借りることにしようかと」
お人好しで、人を信じてやまないって?
なんだか傲慢な子だなぁ
「残念だけど、クザキ君の両手はもう塞がってるし協力はできないな」
というのも
「先輩!ご飯の準備の準備ができました!作り方をぜひ!!!」
「カグラ君、明日の予定早く決めてくれる?」
「クザキ!荷物の持ち込み終わったぞ!」
大人気、やばい。めっちゃアオハル。まぶしい